健康と幸せのために、私たちは何をすればいいのでしょうか。

脳科学と心理学の最先端で分かってきている成果をご紹介しつつ、ご一緒に心と脳の関係から内宇宙の旅を始めてみたいと思います。

皆さまの中には、歳をとると、脳は衰え、一度、消滅した脳細胞は二度ともとには戻らない、とお考えの方がおられるでしょうか。

それが、医学的に間違っていて、脳は、何歳になっても成長することが科学的に裏付けられた話を、初回に、お伝えしたいと思います。これから数回の話題は、認知症予防にもなりますのでお楽しみに。

確かに、かつて脳細胞は成人後には新生しないと考えられていました。しかし、1998年、大人の脳内でも新しい神経細胞が生まれるという研究が発表され、大きく流れは変わりました。

新生細胞は、刺激の乏しい状態ではすぐに死にますが、適切な刺激が入ることで、生き残り、機能してゆくことが分かったのです。

大人になっても、神経の新生があり、脳を鍛えて、神経ネットワークを密にしてゆける。それは人間の持つ無限の可能性を支持する明確な医学的事実なのです。

ギリシアの哲人プラトンは、「人間は、探究する存在である」と言いました。確かに、人は、学び、成長し続け、達成を繰り返しています。

95歳を越えた私の母親は、今でも、キルトの裁縫などを通して日々、発見の連続で、頭はしっかりして、まったく衰えを知りません。脳は、挑戦に、鍛錬に、前向きな気持ちに、応え、支えるようにできている。

つまり、脳にとっても、成長することを「幸せ」と感じて、その方向に働き、活性化するように創られているのです。

「現状維持は、退歩なり」という言葉がありますが、現状に満足してしまうと、さらに成長する可能性があっても、脳はそこで成長を止めてしまう。

なぜなら意識が、知りたい・学びたい・達成したいという「願い」に応えようとするのが、脳本来の性質だからです。

意識が、成長を止めれば、それに連動するように、脳も成長を止めてしまう。筋肉と同じで、使わなくなると衰えるが、適切に使えば何歳になっても（筋肉がそうであるように）、脳も、成長する。

80歳を過ぎて、ドラムを習い始めた人を、数か月後に、MRI（磁気共鳴映像法）で診断すると明らかな脳の成長が認められる。

25歳を過ぎれば、普通なら脳細胞の全体数は低下するのですが、瞑想する人は、逆に増えてゆくことが、ハーバード大学の研究で明らかになっています。そうした事例は、枚挙にいとまがありません。

今日、意識、心の持ち方が、肉体細胞、遺伝子レベルで、心身の健康に影響を及ぼしていることが医学的に明らかになってきました。しかし、意識そのものについては、未だほとんど分からず、未開拓のままです。

脳科学では、脳について、まだその３～10％しか分かっておらず、90％以上が、未知のままです。それは宇宙に似ていて、今の科学では宇宙の95％が、それが何かまだ分からない未知（＝暗い）という意味でダーク・エネルギー(dark energy)、ダーク・マター(dark matter)と言うわけです。

意識についても、今の人類にとっておよそ95％は、自覚できていないという意味で、宇宙と同様に、未知なのです。

だからこそ未開の心と脳の世界に光を当て、新たな可能性を引き出すことで、心身の病の根本的治癒だけでなく、本当の心身の健康に基づく幸せを体験していただいて、人間の意識が生み出した環境問題を初めとする様々な問題も、根本的に解決する道を拓くことができるのでは、と期待しています。

体と脳の健康は、心の幸せの土台になるからです。