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心とは何か━意識の究極を描いた空海の「秘密荘厳住心」

Akira Ishibe

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石部 顯 1955年、岡山県津山市生まれ。 子供の頃、自閉症で苦労するが、高松稲荷で祈ったところ、特別支援学級の知的レベルから、10年後に東大に入り心理学を研究することへ導かれた。1980年卒業。 人間の意識が秘める力、自分を超えた大きな力が存在すること、その二つが共鳴することで開かれる、皆が幸せになる道を探究し伝えている。 最新科学と古代の叡智、東洋と西洋の文化を統合し、日本の自然・文化・こころの真価を日本の若い人たち、アメリカ人に伝えてゆきたいと願っている。 その一環として著書『真理大全 真理篇 科学篇 思想篇』を、今秋に刊行予定。
心とは何か━意識の究極を描いた空海の「秘密荘厳住心」

 空海の描いた曼荼羅世界について、ご質問を頂きました。紙幅の都合もあり、答えにはならないものの、 今回はその一端に迫ってみたいと思います。結論から言えば、空海の曼荼羅には、仏や菩薩だけでなく、あの世この世の魑魅魍魎、鬼や修羅、自然界の動植物まで、ありとあらゆる宇宙一切のいのちと、それらの過去・現在・未来が描かれています。そして、それが、あなたの心だというのです。自然も、宇宙も、永遠の時も、悟れば、あなたの心そのものであると━。

 「私たちは、知れば知るほど、絶対的な意味で、無知になり、ただ悟りだけが、私たちの意識の限界に導く。…宇宙の秘密を知りたければ、エネルギー、周波数、波動について考えなさい」━ニコラ・テスラ

 "The more we know, the more absolutely ignorant, only enlightenment leads to the limit of consciousness. ...If you want to find secrets of the universe, think in terms of energy, frequency, and vibration." ━Nikola Tesla 

 

 私たち一人ひとりの意識を、個々の氷山に喩えるなら、あらゆる氷山(人類すべての意識)と、それらを浮かべる海に当たる実在の世界(あの世)を、すべて一つに結び、支え、導き、それら自体でもある根源の光のエネルギーがあるという。ここで言う光とは、物理的な光に比べて、遥かに振動数が高い精妙な意識を持つ光であり、昔の人は、これを霊とか、気と呼んだ。

  そうした地球の海底の大地に当たる根源的な一(いつ)なる世界を、仏教では、阿摩羅(アマラ)識━自性清浄心、私たちの潜在意識が浄化され、転換した清浄な識、如来蔵、仏性、真如・真理そのものの世界であるという。ソクラテスやプラトンは、太陽を信仰したが、その太陽とは、実在の世界に燦然と輝く太陽のような愛と智慧の根源の光であった。エジプトの太陽信仰も、自然界の太陽の背後に、あの世の永遠の太陽を観ていたのであり、日本では、天照大神(天を遍く照らす太陽の神)、大日如来(偉大なる太陽の仏)と呼び、本質は皆、同じ光の実在を指している。

 私たち人間は皆、根底で一つに共通した実在界(あの世・イデア界)の太陽、愛と慈悲と智慧の光のエネルギーによって創られ、生かされ、支えられ、導かれていて、その根源の存在を、昔の人は、神、仏と名づけた。神仏の心は、私たちの魂の故郷である実在の世界に輝く真如の太陽━すべてを照らし、育み、見守り、すべてを可能にしている慈悲と愛の塊であり、古代より世界中で、様々な時代に、異なる文明で信仰されてきたわけである。

 

 空海は、私たち一人ひとりの心の源底に、胎蔵界・金剛界曼荼羅(宇宙の真理・仏の悟りの世界)に描かれた諸仏・諸菩薩・諸尊が活動し、内側からも外側からもダイナミックに私たちに働きかけてやまないという。心の核心を、「秘密荘厳住心」と呼び、人間の意識が抱く可能性の極北を示したと言ってよい。私は、50年にわたって世界の古今の思想、心理学を渉猟してきたが、心とは何か、━その低次から高次に至る可能性と関係性について、空海ほどのスケールをもって総合的、包括的に描き切った人物を知らない。

 潜在意識にある智慧と力、真如の世界と協働するには、心を磨き、心の波動を、自然の波動に合わせる必要がある。自然こそが、私たちに、潜在意識にある智慧と力、神仏の心に共振する波動を教えてくれている。道元が、自然は、経(真理)を語っていると言った所以である。世界の各地で、人類の教師、聖人と言われる人たちは、自然から叡智を学び、それを人の生きる道として説いた。それが後に、思想、哲学、宗教の教えとなるが、本来は、直接自然から学ぶべきものなのである。NATURE JAPANの使命の一つが、ここにあると思う。

 自然と一つになり、自然の波動と共振する心を、一言で言うとすれば、「まごころ」である。神仏の心に通じる仏性、赤心、真心が、神仏の心との協働を生む。イエスは、「幼子のような心」と言った。世界のどこに行っても通用する、普遍の真理である。

2024/9/25

Tags:内宇宙の旅

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