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人間の創造は、AIを超える━創造の心理学・脳科学の答え

Akira Ishibe

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石部 顯 1955年、岡山県津山市生まれ。 子供の頃、自閉症で苦労するが、高松稲荷で祈ったところ、特別支援学級の知的レベルから、10年後に東大に入り心理学を研究することへ導かれた。1980年卒業。 人間の意識が秘める力、自分を超えた大きな力が存在すること、その二つが共鳴することで開かれる、皆が幸せになる道を探究し伝えている。 最新科学と古代の叡智、東洋と西洋の文化を統合し、日本の自然・文化・こころの真価を日本の若い人たち、アメリカ人に伝えてゆきたいと願っている。 その一環として著書『真理大全 真理篇 科学篇 思想篇』を、今秋に刊行予定。
人間の創造は、AIを超える━創造の心理学・脳科学の答え

 将来、人間とAIが共存するとすれば、AIの進化に伴って、人間による創造と、AIが行える創造との違いは一体どこにあるのだろうか━。心理学と脳科学の知見から、創造をめぐる「内宇宙」を旅してみたい。

 

 チェスや将棋の世界では、AIが人と勝負すれば、AIの方が勝つ。ChatGPTに問えば、経営に関して、プロのコンサルタントも驚くほどの的確な提案を出してくる。大学院を受験する学生が、想定される入試問題をAIに作らせ、それに取り組むことで実際に試験にパスしている。小説、絵画、写真、動画、イラスト、デザイン、建築設計などの分野でも、かなりの高水準で優れた作品を生み出し、大いに利用できるレベルにある。

 あと数十年もすれば(もっと早いとみる人もいる)、いま人間のやっている仕事の多くが、AIに移行するという予測がある。過去そうであったように、技術の発展に伴い、それまで人間がやっていた仕事が機械に移行するようになれば、人間は、必然的に他の仕事をすることになる。では、人間にできて、AIにできない仕事、創造とは、一体何なのだろう━。

 

 あるAIの研究者は、私たちは今、改めて「人間とは何か」「意識とは何か」を深く問う時に来ていると言う。まったく同感である。心理学によれば、人間の意識は、顕在意識(自分で自覚できている意識)と潜在意識(心理学者フロイトの無意識、ユングの集合的無意識・魂、仏教が説く過去世のすべての記憶)から成り立っている。顕在意識は、全意識のわずか5~10%にすぎず、潜在意識が、90~95%を占める。潜在意識は、自覚していない自分のものの見方・考え方、行動の基となっている情報とエネルギーであり、生命力の根源でもある。

 脳科学は、人が一生に使う脳は、全体のわずか3%に過ぎず(それも現代人の多くは、左脳の一部に偏り、右脳・脳幹・古皮質などの潜在力はほとんど未開発である)、その3%を、いま主導的に使っているのが、顕在意識である。使われていないとされる脳の97%が、潜在意識に深く関与していると考えられる。左脳と右脳、さらには脳の深部━脳幹<爬虫類にもある>と古皮質<哺乳類にもある>(それらの機能は、右脳に出る)を含めて、私たちの潜在意識には、脳全体を活性化することで目覚める巨大な能力が秘められているのだ。

 

 私たち現代人は、左脳(言語・論理・分析・思考)の一部はよく使っているが、右脳(創造性<想像・直観>、芸術、空間認識、情緒、視覚・聴覚記憶)は、ほとんど使っていない状態にある(右脳の機能に目覚めた、少数の人はいる)。

 右脳には、大量の情報をイメージとして高速で記憶する力、イメージから言葉・音・色・匂い等に、自在に瞬時に変換する力がある。そして「今ここ」「つながり」の感覚、楽しい・喜び・幸せの情動にも深く関与している(左脳に偏ることで、現代人の多くは、比較、批判、優劣に捉われ、悲観的、否定的、うつ的な気分に陥っている)。

 

 本来、日本人は、DNA分析(仮説段階だが)からも、右脳優位の民族と言えるが、現在は、知識偏重教育・社会の影響もあり、非常に偏った左脳優位となっている。2024年世界幸福度ランキングで、先進国中、日本が最下位である理由の一つが、この点にある。右脳や脳の深部、全脳を活性化することで、誰もが心に安らぎを得て、楽しく幸せに、皆と調和して生きる潜在能力に目覚める可能性が残されている。その力を開花せずにいることは、本当は大富豪なのに、自分は貧者だと思い込み、勝手に苦しんでいるようなものである。

 

 人間の顕在意識が行えるような仕事は、ほとんどAIが代わりにできるようになる時代が、比較的早く来るのではないだろうか。なぜなら、顕在意識が、その働き上、過去の情報をもとに思考を働かせているように、AIもまた、膨大な過去の情報を蓄え、学習し、それらを組み合わせて最適解を生み出しているからだ。この点、ビッグデータを有し、ディープラーニングで進化するAIを、一人の人間の顕在意識が凌駕することは難しいだろう(共存は可能である)。

 しかし、ここで重要なことは、あくまでそれは、「過去」のデータに基づいているという点である。つまり、AIの出す答え、創造する作品には、組み合わせの斬新さはあったとしても、それを含めて、「過去の延長線上」にあることには違いがないからである。その欠点も、見えてきている。

 アメリカのアマゾンで、社員の採用試験にAIを用いたところ、女性差別の傾向があることが分かり、AIの使用をやめたという。過去や現在の束縛・偏見・限界から解放された知性、あるいは未来に必要とされる見識・ビジョンをもって、求められる課題について自由に想像し、考え、かつてない、まったく新しいものを創造してゆくことは、AIにはできないのだ。ましてや、シェークスピア、ダ・ビンチ、バッハなど、魂を揺さぶる神韻の響きと深遠な宇宙の真理を湛えた作品を、新たに生み出すことは、AIにはできないだろう。スピリチュアリティ(霊性)、インスピレーション(霊感)、魂、生命が、人間の真の創造には関与しているのだから。

 

 AIを超えるものこそ、私たちの潜在意識━全意識の90~95%、左脳だけでなく右脳も活性化し、脳の深部も含めて全脳を使って開かれる力━にある想像力であり、知性であり、智慧、アイデア、インスピレーション、直観なのだ。そこには、過去・現在・未来の無限の情報が蓄えられており、その宇宙には、過去の呪縛を解き、時代の壁を打ち破って未来を切り開く、社会の様々な分野でブレイクスルーをもたらす新しいアイデアやインスピレーションの星が輝いている。それをつかまえ、地上に降ろし、形にするのが、21世紀のAI時代を生きる、私たち人間の使命なのではないだろうか。

 

 アインシュタインも、吉田松陰も言っている、━私たちは、誰もが、かけがえのない天賦(てんぷ)の才を抱いていると。私は、その「天賦の才を開花させる」ことと、一人ひとりの「潜在意識に眠る知性・感性・叡智を開放する」こと━与えられたいのちの可能性を思いっきり開花して、皆と共に人生を楽しみ創造することは、同義であると思っている。

 そこにこそ、人間によってのみ果たされる創造の核心、人の人たる所以(ゆえん)、万物の霊長たる人間に授けられたいのちのエッセンスがあるのではないだろうか。

 

 

 

2024/10/21

Tags:内宇宙の旅

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