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愚老庵ノートSo Ishikawa

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太陽の動画を撮る

太陽の動画を撮る

生きとし生けるものに無償でエネルギーを供給する太陽は、古代から信仰の対象になってきました。心の旅をナビゲートする NATURE JAPAN の制作でも、太陽は内宇宙への扉を開く貴重なアイテムになっています。

太陽の光はカメラには収まりきらないほど強烈です。ダイレクトに太陽を撮るためには、NDフィルターで光の量を減らし、さらにレンズで露光を絞り込まなければなりません。

昇る太陽と打ち寄せる波を同じフレームに収めるとどうなるでしょうか。太陽に合わせて露出を絞り込むと、波は黒く潰れてしまいます。波に絞りを合わせると、今度は太陽が白く飛んでしまいます。

このような場合には、収録後の画像処理で「波」を持ち上げ、明るくするしかありません。そのために、露出は波の信号が黒潰れしないギリギリのところにもっていくことにしています。

写真であれば、一瞬のチャンスのために最適な露出とシャッタースピードを設定すればよいのですが、動画では事情が異なります。

太陽が水平線から顔を出して昇り切るまでの時間は数分間。撮影している間に太陽はぐんぐん明るさを増してゆきます。昇り始めに絞りを合わせると、昇り切る頃には画面は白く飛んでしまいます。

オートアイリス(自動露出調整機能)を使うと、波の動きに追随して露出が上下し、落ち着きのない画になってしまいます。

手動で、徐々に露出を絞ってゆく方法もありますが、レンズのリングに触れるので、収録している画面が振動してしまうリスクがあります。

太陽が顔を出す時ではなく、水平線を離れる時の明るさを想定して絞りを決める。そして、雲や波など周囲の状況を見ながら、カメラが揺れないように少しずつ絞りを微調整してゆく。私は今、このやり方で日の出のシーンを収録しています。

沈む太陽を撮る時には、太陽が水平線に接するタイミングを目安にして露出の微調整を行っています。いずれにせよ、太陽の動画シーンをつくり込むためには、明るさと揺れを補正するために収録後の画像処理が大切になります。

 

NATURE通信 Dec.2021 昇る太陽
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-dec2021-2/

 

太陽の動画を撮るときに、もうひとつ私がこだわっていることがあります。それは見た目に近い自然な太陽を撮ることです。

今年は、初日の出をテレビ中継で見ていましたが、画面に昇ってくる太陽にはしっかりと十文字の光条が入っていました。ダイアモンド富士を演出するためにクロスフィルターを使ったのかもしれませんが、私はとても違和感を感じました。

SNSに投稿された映像でも、放射状の光条が入った太陽をよく見かけます。この光条は、レンズの光量を絞る羽根によって作り出され、その枚数によって光条の数が決まるそうです。

自然の太陽に光条はありません。光条のない自然な太陽を撮るために、私は玉ボケが綺麗な丸を作る「円形絞りのレンズ」を装着したカメラを使っています。

レンズがつくり出すハレーションも、自然の中には存在しません。光の玉が出現するゴースト、光のベールがかかるようなフレア。これらを使って効果的な画づくりを試みたこともありますが、残念ながらNATUREの世界には人工的なエフェクトは馴染みません。

ゴーストやフレアは、レンズ前に板状の庇をつけてハレーションをカットする「ハレ切り」のためのグッズを使って、できる限り排除するようにしています。

余談ですが、NATUREの収録を始めた40年前、テレビカメラはプランビコンという撮像管を使っていました。このカメラを太陽に向けると、焼き付いて回復するまで使えなくなってしまうので、太陽を撮るのはタブーでした。

CCDの時代を経て、積層型CMOSイメージセンサーによって自然で美しい太陽を撮れるようになったのはつい最近のことです。

ようやく撮れるようになった太陽で、どのようなメッセージを伝えてゆくことができるのか。内宇宙への扉を開く「太陽の動画」の探求は、まだ始まったばかりです。

NATURE通信 Jan.2022 太陽の道
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-jan2022-5/

2022/1/27

Tags:制作ノート

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