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愚老庵ノートSo Ishikawa

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犬が教えてくれること

犬が教えてくれること

月日の経つのは早いもので、最愛の「息子」Baron があの世に旅立って、もう5年と7ヶ月になります。

新しい子を迎えることも考えたのですが、自分の年齢を考えると最後まで十分なケアをしてやれる自信がありません。

小型犬を飼うように勧めてくれる方もいらっしゃるのですが、いつも傍に居る図体の大きな大型犬の「存在感」は、小型犬とは全く別ものなのです。

妻に反対されたこともあり、新しい子は諦めて、これからの日々を、あの世の Baron と一緒に生きることにしました。

Baronが元気だった頃、一緒に遊んでいた犬友たちが、今でも週末や休日には、井の頭公園に集結しています。NATURE収録の体力づくりのための散歩がてら、毎週のように、あの世のBaron と一緒に出かけて行って、代替わりしたこの世のワンコたちと遊んでいます。

この40年の間に、犬の寿命は2倍に伸びたという報告があります。この40年で、日本の犬の飼い方は驚くほど変わりました。

番犬として家の外で鎖に繋がれ、残飯を与えられていた犬の姿は、もはや遠い過去のものとなり、犬は今では、家族の一員として大切にされ、飼い主と同じベッドで一緒に眠るようになりました。

最近の犬たちは、食事と排泄、散歩と運動、シャンプー・カットとブラッシング、病気や怪我の治療など、至れり尽くせりのケアを飼い主から受けています。

犬はずっと「3歳児」のままです。成長して親元を離れることはありませんから、飼い主は「我が子」が死ぬまでずっと、このケアを続けることになります。

愛情を注がれた犬たちは、飼い主を信じ切って自分の体と命を預けます。そして、その「真っ直ぐでひたむきな眼差し」は、飼い主の「愛する力」を引き出さずにはおかないのです。

人は誰かを愛さずには生きてゆけません。本当は愛したいのに、もっと深く関わりたいのに、経済効率とプライバシーを優先する「超管理社会」は、なかなかそれを許してくれません。

この世では今、人と人との絆が、どんどん希薄になっています。都会に暮らす大多数の人たちは、隣近所に住んでいる人のことを、ほとんど知らないのではないでしょうか。

近所付き合いは無くなり、かつて生活共同体だった「日本の会社」は、仕事をして生活費を稼ぐだけのドライな場へと変わりました。生涯結婚しない人の割合は年々増加し、冠婚葬祭に集うのは、近しい家族だけになりました。

追い討ちをかけるように、コロナ禍は、親しい友人や家族との絆を分断し、リモートワークは、人と人とが「生で」触れ合う機会を、仕事の場からも駆逐してゆきます。

SNSに人との絆を求めても、そこにあるのは、リスクを避けて「映え」を意識した当たり障りのない表面的な付き合いだけで、逃げ場のないリアルな現実を共に生きることで生まれる「深い絆」は、望むべくもありません。

人間同士がガチで深く関わることが困難になり「愛する力」が失われようとしている時代に、神様が人間を救うために遣わしてくれた使者、それが犬なのではないか、私はそう思っています。

犬は、「愛する力」を引き出してくれるだけではありません。私たちを映す鏡となって、自分には見えていない私たちの「本当の姿」を見せてくれます。

犬は、飼い主に似てくると言われます。それは、犬がケアしてくれる飼い主に服従し、託身することによって、飼い主の嗜好やライフスタイルに染まるからです。

犬は人の言葉がほとんど理解できませんから、生きてゆくために、全身全霊で飼い主が発している感情や想念の「波動」をキャッチしようとします。

犬たちがキャッチしているのは、私たちが「自分」だと思っている「表面意識」の波動だけでありません。飼い主が自分では自覚していない「潜在意識」の波動までキャッチしているのです。

飼い主は、きちんと社会のルールを守って常識的に生きているのに、犬はやりたい放題というケースをよく見かけます。

これは「自由奔放に生きたい」という飼い主の隠された願望を犬がキャッチして、それに応えようとしているからなのではないでしょうか。

口では犬を制止しながら、心の奥で秘かに拍手喝采している状態では、ちゃんと訓練しているつもりでも、犬が言うことを聞くわけがありません。

人間や他の犬に対して攻撃的になってしまう犬もいます。このケースは、飼い主が潜在意識に、世の中に対する恐怖心や怒りをため込んでいることが多いように、私には見えます。

今、飼い主が犬をコントロールできず、手がつけられない状態に陥ってしまうケースも増えています。その最大の原因は、可愛さのあまり、犬を人間だと思ってしまう「錯覚」にあると言われています。

犬の DNAには、群れで生きてきた野生の時代の習性が刷り込まれています。群れの中で信頼できるリーダーに従って生きること、それが「犬の幸せ」だったのです。

犬を溺愛し、何でも欲求を叶えてやろうとすると、犬は飼い主を「召使い」だと思い、群れのリーダーとは見なさなくなります。

リーダーの不在という状況から生まれる「過大なストレス」が、犬を様々な問題行動に走らせる、とシーザー・ミランは言います。

ミランはアメリカのドッグトレナーで、20年ほど前、ハリウッドのセレブ達の「犬の悩み」を解決するテレビ番組で一世を風靡しましたが、ドッグサイコロジーセンターを設立して、今は犬と人との研究に専念しています。

「犬は言葉ではなく、内的エネルギーを感じ取る。リーダーとして、穏やかで毅然としたエネルギーで犬を扱えば、犬は穏やかで従順になる」ミランはそう主張します。

「飼い主に訓練を、犬にはリハビリを」犬を変えるのではなく自分が変わるという、このミランの言葉は、人間関係の悩みを抱える人たちにとっても、一筋の光明になるのではないでしょうか。

犬を犬として愛そうとした時、犬は、私たちがいかに「錯覚」の中で生きているのかを教えてくれます。

人間は外界を認識するための知覚のうち、8割を視覚に頼っているそうです。視覚から得られた情報は直ちに脳の思考回路で分析、照合され、記憶されます。私たち人間は、そのほとんどを、視覚を中心に構築された「知の世界」で生きているのです。

犬の知覚は、嗅覚が4割、聴覚が3割、視覚は1割と言われています。その嗅覚は人間の3000倍から10000倍とも言われ、20km先の匂いを嗅ぎ分けられるそうです。

犬の可聴範囲は80000〜120000Hz、人間の可聴範囲は 25000Hz 位以下ですから、犬は人間よりも数倍高い周波数の音を聞くことができます。

犬たちは、この嗅覚と聴覚をフルに使って世界を認識し、匂いと音を中心に構築された「波動の世界」で生きています。

私がまだ40代だった頃、PVの取材で、高齢者の認識している世界を体験するための「高齢者体験キット」を装着したことがあります。

手足に錘をつけ、ヘッドホンと特殊なメガネを着けた短時間の擬似体験でしたが、「やがて自分もこうなるのか」と感じた時の衝撃は、今でも鮮明に記憶に残っています。

もし、「ワンコ体験キット」が開発され、それを身に着けることができたら、その体験は、同じ時空間に「人間の想像をはるかに超えた世界」が実在していることを、私たちに教えてくれるのではないでしょうか。

私たちは、肉体の五感で知覚できる範囲を超えた世界が周囲に存在していても、何ひとつ認識できません。それなのに自分の認識している世界がすべてだと「錯覚」しています。

私たちは生まれてくる時に、肉体という「この世体験キット」を身につけたことを忘れてしまっているのです。そして、死を迎えてこのキットを脱いだ時、自分がいかに狭い領域に閉じ込めたれていたのかを知って、愕然とするのではないでしょうか。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「無知の知」という言葉で、知らないことを自覚する難しさを説きました。

私たち人類は、原始的な「無知」の状態から、視覚と思考による「知」によって物質の世界を支配し、現代の科学技術文明を築き上げてきました。

この「知の文明」が崩壊の危機を迎えている今、私たちは「物質の次元」を超えたもっと高次元の「大きな智慧」に目覚めることを求められているのではないでしょうか。

犬を支配して自分の思うままにしようとするのではなく、自分を知る手がかりを与えてくれる「神様の使い」として愛する時、ワンコたちは、この「大きな智慧」へと向かうかけがえのないパートナーになってくれる、私はそう信じています。

そんなことを考えながらも、ワンコたちにモテたくて、散歩に行く前に嬉々として、おやつを準備している愚かな私がいます。

愚かな自分を自覚させてもらう幸せに感謝しつつ、Baronと連れ立って、今週もワンコと犬友の集う居場所に向かおうと思います。

 

生命の再生を待つ清々しい冬の輝きをお届けします


NATURE通信 February 2024 「冬の輝き」
https://nature-japan.com/cat_nature/feb2024/

シーザーミランの著作とDVD
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/360768/090300005/?ST=m_m_column

2024/2/26

Tags:内宇宙の旅

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