愚老庵ノートSo Ishikawa
動画に余白をつくる
自然の神秘的な時空間から「生命のリズム」を抽出する時に、私が心掛けているのは、動画に「余白」をつくることです。
生命のリズムが造り出す「余白」は、心の旅をする途中で、心を映すスクリーンとなって懐かしい風景を映し出してくれます。
ハイビジョンから4K、そして8Kへ。最近の動画は驚くほどリアルに被写体を映し出せるようになりました。
しかし、現実をリアルに映し出せば出すほど、心の旅に必要な想像力を生み出す「余白」は失われていきます。
余白のないリアルな動画は、内宇宙の旅に出ようとしている私たちの意識を、現実の世界に引き戻します。
高精細化する最近の機材を使って、どうやって動画に「余白」を創り出せばよいのでしょうか。
あたりまえのことですが、私は、フレームの中に、できるだけ余計なものを入れないようにしています。
フレームから、意識を外界に向けようとするものを取り除くことによって、「画面の余白」が生まれます。収録した画面から、後処理で人工物などを取り除くのもこの余白を創り出すためです
レンズの被写界深度を浅くして背景をぼかしてゆくと、「奥行きの余白」が生まれ、画面に奥深さを創り出すことができます。
また、光の明暗を捉えて暗部に想像力を生み出す「陰翳の余白」をつくり出すこともできます。
画面の中で被写体の動きが激しすぎると、想像力の働く余地がなくなります。「動きの余白」をつくることも大切です。
こうして「余白」を創り出してゆくと、動画はだんだん簡素なものになってゆきます。
動画が単調になりすぎると、画面に飽きて集中できなくなり、内宇宙への旅がそこで中断されてしまいます。
動画に「余白」を創り出す時に、もうひとつ大切なことがあります。それは「飽きさせないように余白をつくる」ことです。
自然が造り出す「生命のリズム」は、規則性と突発性が組み合わされたリズムです。
もともと自然そのものが「飽きさせない余白」を造り出しているのですが、現代に生きる私たちは、なかなかそれを感じ取る事ができなくなっています。
心の旅に出るための動画づくりの秘訣は、自然の神秘的な時空間から、現代人のペースに合わせて「飽きさせない余白」を抽出してゆく「優しさ」ではないかと思っています。
NATURE JAPAN
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2021/6/10
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