愚老庵ノートSo Ishikawa
NATURE通信の音づくり
自然の動画風景が、どんなに高精細なディスプレイに映し出されていても、その風景はバーチャルであることがわかります。
しかし、上手に録音された「環境音」を聴いていると、リアルな現実音とはなかなか区別できません。音の拡がりには、映像ディスプレイのようなフレームはありません。
リアルな現実音が聞こえてきた時、動物としての本能が反射的に動き出し、内界へ向かおうとする意識は、現実世界に引き戻されます。
内宇宙の旅をナビゲートする音づくりで大切なのは、「リアルにしすぎない」ことではないでしょうか。
映像と同じに、いやそれ以上に、想像力が拡がるような「余白」をつくり出すこと。それが、NATURE JAPAN の音づくりの秘訣ではないかと考えています。
余白をつくり出す「録音」については、別途お伝えすることにして、今回は、NATURE通信の音声加工処理について紹介させていただきます。
NATURE通信では、「四季折々の生命のリズムに触れる」というコンセプトに忠実に、音声にはできるだけ創作を加えないようにしています。
映像を切り出して一通り加工を済ませたら、まず、気になる音声ノイズを除去します。これは内宇宙に意識を集中してもらうためには欠かせない作業です。
飛行機や車の音、人の声や足音などの人工的なノイズをカットしていきます。
息づかいや衣擦れの音など、自分が立てたノイズもカットします。収録している間、長時間ずっと動かずに息を止めているわけにはいきませんから、この作業が発生してしまうのはいたしかたありません。
ノイズ部分をカットすると、そこは無音になります。この隙間を、前後の音を使って埋めていきます。映像と音がシンクロしているシーンでは、ズレや違和感が出ないように細心の注意を払ってこの隙間を埋める必要があります。
次に、エコライザーを使って、収録した「音」のどこの帯域を際立たせ、どこを削ればよいのかを探ります。通奏低音のように全体に乗っているノイズは、できるだけカットします。
音がリアルすぎる場合はリバーブ(残響音)のエフェクターを使う場合もあります。
リアルな現実の向こうに、物質の次元を超えたもう一つの世界を感じてもらうための「余白」をどうやってつくり出してゆくか。
この作業は、試行錯誤しながら進めてゆきますが、思い通りの音を創り出すには、ミキシングの基礎知識があった方がよいかもしれません。
などと偉そうなことを言いながら、私が自分でミキシングをしているわけではありません。
私は我儘を言うだけで、実際のミキシングは、現在GROWの技術責任者で、若かりし頃?レコード会社のミキサーを目指していた上野真人さんが担当してくれています。
音づくりの技術に関して詳細を知りたい方には、上野さんにご連絡ください。
2021/6/16
Comment
なるほど、現代の技術は素晴らしいですね!
私はてっきりそのままの音と思っていました。とても自然です!
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