愚老庵ノートSo Ishikawa
都会の自然を収録する
10月1日に緊急事態宣言が解除されましたが、コロナ禍は NATURE の収録にも大きな影響を及ぼしました。東京ナンバーの車に厳しい目が向けられ、宿泊が難しくなったために、この1年半、遠出できない状況が続きました。
半径200キロの日帰り圏内で「深夜出発の日帰りロケ」を繰り返して、収録を行なってきましたが、旬の自然を届けるNATURE 通信のコンテンツを揃えるには、どうしてもバリエーションが足りません。
ちょうどいい機会なので、これと並行して、以前からずっと気になっていた「都会の自然」の収録に取り組みました。
吉祥寺に住んで20年になります。徒歩圏内に井の頭公園と善福寺公園があり、人の手は入っていますが、自然は豊かに保たれています。
愛犬が亡くなる前は、毎週のように公園を散歩していたので、いつどこに行けばどんな風景に出会えるか、大体見当がついています。
早春には梅とコブシ。満開の桜が散るとツツジと新緑。梅雨の季節には紫陽花。夏には水蓮。秋には紅葉と月。そして冬には落葉と雪景色。水辺には鴨やカイツブリが遊泳し、時にはカワセミがやって来ます。耳をすませば鳥達の囀りが聞こえ、蝉や虫の声が季節の変化を知らせてくれます。
2つの公園は「小さな自然」の宝庫であり、魅力的な被写体で溢れています。これらの風景を「心の旅に出るための動画」に仕立てるにはどうすればよいのでしょうか。
印象派の画家達が、風景を通して「光」を描こうとしたように、NATURE JAPAN では被写体から「神秘的な変化」と「生命のリズム」を抽出しようとしています。
そこに必要なのは、光や風、雲や雨など、風景に変化とリズムを造り出す自然現象です。「小さな自然」の向こう側に、それと繋がる「宇宙」を感じてもらうためには、被写体と自然現象が造り出す時空間の変化を、絶妙なタイミングで切り取らなければなりません。
桜が散るタイミングと春風が吹くタイミングが合わさって「桜吹雪」が生まれます。萌え出る若葉とそれを揺らすそよ風が「新緑のゆらめき」を造り出します。
「月に叢雲」は、満月に薄い雲がかかるチャンスを、辛抱強く待たねばなりません。突然降り出した雪が、見慣れた風景をあっという間に銀世界に変えてしまうこともあります。
自然現象は待ったなしです。すぐに駆けつけられる場所、よく知っている場所であれば、待ったなしの自然現象と出会える可能性は格段に高まります。
コロナ禍は、原点に回帰して自分の足元を見直せば、都会に居ても「小さな自然」から、NATUREの世界を創り出す術があることを教えてくれました。
NATURE JAPAN Oct.2021 月と叢雲
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-oct2021-6/
2021/10/5
Comment
コメント投稿には会員登録が必要です。