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愚老庵ノートSo Ishikawa

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三陸の渚にて

三陸の渚にて

遠野に移住した友人が、三陸海岸の撮影ポイントを案内してくれることになり、久しぶりに遠くまで足を伸ばしました。

この友人は、清水敬示さんという建築家で、自然環境と共生する「微気候デザイン」による住まいづくりを提唱しています。拠点となるモデルハウスを建設するために遠野に移住しましたが、私にとっては、30年前から「NATURE」の制作を支援してくれているかけがえのない仲間です。
清水さん「おすすめ」の碁石海岸に向かう途中で、東日本大震災で津波に襲われた陸前高田を通りました。

3.11の被災地には、巨大な防波堤が築かれていました。海と陸地とを遮断する巨大なコンクリートの壁、そして盛土で嵩上げされた造成地。延々と続くその風景の中を走っているうちに、暗澹たる気持ちになりました。

確かにこの防壁を築くことで、守れる命や財産があると思います。しかし、それと引き換えに失われたものがあります。海と陸とが繋がった豊かな生態系、そしてそこで暮らす人々が作り上げた懐かしい里山の風景は、もう戻ってはきません。

現代文明は、科学技術を追求し「自然を征服する」ことによって、「安全で快適な暮らし」を実現しました。しかし今、そこから生まれた「鉄とコンクリートの建造物」が地球上を覆い、ひとつに繋がった生態系のネットワークを破壊しています。

人間による環境破壊は、今や 地球という生命体が自浄作用を引き起こさねばならないレベルにまできてしまったように感じます。

古代ギリシャの哲学者プラトンは、超古代文明アトランティスの洪水伝説についての記録を残しています。アトランティス伝説は、環境破壊によって地球の地軸が移動すれば、どんなに強固な防壁を築いたとしても、守ろうとした大陸そのものが洪水によって沈んでしまうということを伝えています。

かつて日本人は、「自然を征服する」のではなく、「自然と共に生きる」というライフスタイルを持っていました。その生き方は日本の独特な気候風土によって育まれたと言われています。

日本の自然は、季節によって劇的にその姿を変えます。四季というサイクルの中で繰り返される無数の死と再生のドラマ。その美しい自然風景が「無常」と「転生輪廻」という死生観を育んだのかもしれません。

魂の再生を信じ、無常に「美」を見い出した日本の伝統文化。そして自然を畏敬し、自然と共に生きようとした先人達。その智慧を私たちのDNAは引き継いでいるはずです。

現代文明が築き上げた物質的な豊かさと快適な生活環境を、このままずっと続けていくのが難しくなったことを、今多くの人が、心のどこかで感じていると思います。

諸行は無常。この世では、どんなに確かに見えるものにも必ず終わりがあります。そして人は必ず死を迎えなければなりません。

現実の世界を変えようとしても、私たちは、あまりにも無力です。しかし、自分の「意識」を変えることによって、世界を変えてゆく道があるのではないでしょうか。

私たちは、地球生命体の一部であり、自然とひとつに繋がっている。死は終わりではなく新しい生の始まり。そのように意識するだけで、見えている世界が変わります。

自分を守るために築いてきた「自我の壁」を抜けて内宇宙を旅する時、そこにはこの世とあの世を繋ぐ「新しい眺め」が見えてくるはずです。

この文明が終焉を迎える時、地球にはどのような世界が再生するのでしょうか。私たちの魂は、その世界に新しい肉体を持って転生してくるのでしょうか。

コンクリートの巨大な壁に囲まれた空間を抜け、わずかに残された自然の海岸で、波の音を聞いているうちに、そんな想いが湧き上がってきました。

NATURE通信 Nov.2021 岩礁と波
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-nov2021-3/

 

ロケに同行してくださった清水啓示さんのwebサイトです

終の住処を建てる 清水啓示
https://lsr-next.com/final_abode/

2021/12/8

Tags:内宇宙の旅

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