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潮騒の音を録る

潮騒の音を録る

北茨城にある北浜は、私の「お気に入り」のNATURE 収録スポットです。
この時期は、朝霧が発生しやすいので、海面に白く立ち上る「気あらし」が狙えます。映像もさることながら、この浜の魅力は、心地よい「波の音」が録れることです。

自然風景の写真を撮ろうとする時、ほとんどの人は、「音」を気にしていないと思います。それは写真の世界に「音」を記録する時間軸がないからかもしれません。

Video は「音」を記録できます。しかし、映像に意識を集中すると、Video を録っていても「音」は、どうしても二の次になってしまうことが多いのです。

動画だけでも「生命のリズム」を伝えることはできますが、同じ時間軸にある「音」の力を使えば、その可能性はもっと大きく広がります。

つい最近も、NATURE 通信を視聴してくださっている方から「心の旅には音の果たす役割が大きいのでは」というアドバイスをいただきました。

最近は、努めて「音」を録ろうとしています。しかし長い間、映像を生業にしてきたために、どうしても意識が「映像」に向かってしまいます。

この流れを止めて「音」の世界に入るために、とにかく一呼吸置いて、目を閉じることにしました。

視覚を遮断すると、それまで聞こえていなかった様々な音が聞こえてきます。

全体に響きわたる海鳴りの音、波濤が砕けて散ってゆく音、砂浜に打ち寄せる泡波の音。聞こえる音は、意識を向ける方向で変わります。

どの音が「心の旅」をナビゲートするのにふさわしいのか。ズームレンズで映像のフレームを決めてゆくように、その「音」を探してゆきます。

この日は、風が弱くて波がやや高く、打ち寄せる波のストロークが大きいので、波打ち際の音が、何とも気持ちよく響いていました。

波濤の砕ける音は、内宇宙への扉を叩いてくれるだろうか。寄せては返す泡波のシュアシュア音は、心の奥深くまで染み入ってくれるだろうか。

そんなことを考えているうちに、突然足元に冷たい衝撃を感じました。海水がズボンの裾を濡らし、靴の中まで入ってきたのです。目を閉じていたので、突発的な大波に全く気づけませんでした。幸い機材は無事でしたが、これでひとまず撮影は終了です。

車のヒーターで濡れた靴と足を乾かしながら対策を考えましたが、なかなかいい考えが浮かびません。波打ち際で目を閉じる時は、くれぐれもご注意ください。

 


NATURE通信 Dec.2021 砂浜来光
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-dec2021-3/

 

潮騒の音を録るために

潮騒の音は、波の高さや風の強さや風向きなどよって変わり、同じ場所に行っても、録れる音は、毎回変わります。

一旦、視覚の世界を遮断して、その場で「心の旅」にふさわしい音を探してみてください。

私は通常、ズームマイクと広角のカメラマイクで拾った音を、並行して別チャンネルに録音しています。

荒れた海では、全体を拾う広角のカメラマイクの音は、自然の脅威を感じさせる「怖い音」になってしまうので、状況に合わせて、イヤホンのように耳に装着するバイノーラルマイクに変えています。(使用している機材では2系統の音声チャンネルしか使えないため)

いずれにせよ潮騒を録る時、ズームマイクは必須。風のノイズをカットするために、アウトドア用のマイク風防を装着していただければと思います。

2021/12/19

Tags:制作ノート

Comment

  • Akira Ishibe:
    2022年1月20日

    潮の香り、海から吹いてくる風、
    陽の温もり、冷えた空気の透明感、……
    すべてが、映像と音響から直接つたわり、
    意識の底にある、深く遠い記憶が甦ってくる。

    「音」の録音に、こだわったのこと。
    確かに、海の音、━豊饒、静謐な通奏低音に
    波の響き、空気の震え、風の香り、陽の光り、
    すべて「音」に凝縮し、籠められている。

    意識が静まり、呼吸が自然のリズムに回帰する。
    古人は、波の音を聴くためだけに、何時間も
    海辺で過ごしたという。そんな贅沢で不可欠な
    心洗われるときを、追体験させてくれる作品である。

    Akira

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