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愚老庵ノートSo Ishikawa

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「降る雪」を収録する

「降る雪」を収録する

高校時代三年間机を並べた竹馬の友、荻原行正くんが雪の写真を送ってくれました。十日町の当間高原で、音もなくしんしんと降る雪と出会い、その幻想的な景色に深く感動したというのです。

写真には、「自分が詩人だったら、画家だったら、せめて写真家だったらよかったのに」というコメントが添えられていました。そしてこの景色を「NATURE」で見てみたいというリクエストがありました。

以心伝心。ちょうど私も「降る雪」を録りたいと思っていたところだったので、コロナと積雪による規制をかいくぐって、豪雪地帯を目指しました。

車での雪のロケは危険を伴います。高齢者の「一人収録」を心配して、心やさしいスタッフが同行してくれることになりました。

「降る雪」を普通に撮影すると、なかなか「心の旅に出るための動画」にはなりません。ビデオカメラの通常のフレームレートは、30fps か 60fps 。30コマか60コマの静止画を連ねて一秒間の動画を作り出しています。

シャッタースピードを秒30分の1にして写真を撮ると、「降る雪」は、線になってしまいます。雪の降る速度が速ければ速いほど、この線は長くなります。テレビのニュースなどで、雪が直線的に見えるのはこのためです。

しんしんと降る幻想的な雪を撮るにはどうしたら良いのでしょう。

私が愛用しているビデオカメラは、最大120fps までフレームレートを上げることができます。120fpsで収録すると、滑らかに落ちてくるふわふわの雪が撮れます。

これを普通に再生すると2分の1のスローモーションになりますが、私はイメージに合うように、編集で再生速度を調整しています。

最近はスマホでも「スロー」の撮影ができる機種が増えています。幻想的な雪を取りたい方は、ぜひスローモーション撮影にチャレンジしてみてください。

NATURE通信 Feb.2022 豪雪
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-feb2022-2/

 

「降る雪」を収録する時のもうひとつの課題は「音」です。現行のビデオカメラはスローモーション撮影時には、音声が収録できません。
同行してくれた上野真人君は、今回カメラから離れ、別行動で「降る雪」を録音してくれました。

音もなくしんしんと降り続く雪。この無音に近い世界をどうやって表現し、伝えればよいのか。編集室で音づくりをする時にも試行錯誤は続きました。

どんな音にするのか、それは視聴してくださる方の端末によっても変わります。今回の音場は、PCやスマホのスピーカーでは、ただの無音にしか聞こえないかもしれません。

上野君の「仕事」の成果は、繊細な音を再現できるアンプやスピーカーとは言いませんが、せめて高性能なヘッドホンかイヤホンで聴いて下さるようお願いいたします。

 

「降る雪」を収録するために

滑らかに落ちてくる雪を撮るためには、最大のフレームレートでスローモーション撮影し、編集で、イメージに合わせて再生スピードを調整する。

「スロー」モードでは録音ができません。音声用の録音機材を用意し、音は別撮りする。難しい場合はカメラで音だけを別撮りする。

気温が下がると、バッテリーの消耗が早くなるので、ホッカイロを機材に貼るのも有効。

「降る雪」の撮影では、機材に積もった雪が溶けて電子機器が作動しなくなることがあるので、防水カバーは必須。

タオルを活用する。機材を保護したり、雪を払う時に重宝する。宿泊する時は、車のフロントガラスにバスタオルを貼っておくと、次の日、凍りついた雪を溶かす手間が省ける。

積もった雪の下には何が隠れているかわかりません。収録に夢中になって危険な場所に入り込まないよう、くれぐれも気をつけてください。自戒を込めてのお願いです。

2022/2/17

Tags:制作ノート

Comment

  • Akira Ishibe:
    2022年2月18日

    「雪の響き」が聴こえる作品
    ━雪の降る音が聴こえるか?

    岡山の北の美作では、冬には雪が積もり、牡丹雪が優雅に舞い降りる美しさに、子どもの頃から、感動して育ちました。
    雪の上に、さらに降り積もる雪を見ながら、舞い降りる瞬間の音を聴くのが好きで、━
    和(やわら)かな、微かに響く音とともに、白い世界に、一緒に融けて遊んでいました。

    この人がいなかったら、今の禅はなかったと言われる白隠さんが、葛の葉伝説で知られる泉州信太の森で、雪の降る夜に、坐禅して「雪の降る音を聴いて得るところがあった」と、悟りを読んだ歌を残しています。

    「聴かせばや 信田(太)の森の古寺の 
    小夜(さよ)ふけ方の 雪の響きを」

    雪降る音は、聴こえる様です、響きとして。

    今回の作品は、まさにその「雪の響き」が聴こえてくる作品だと思います。カメラを固定する足元が定まりにくいであろう地に、どっしり大地に根を張ったように据えられたカメラ目線だからこそ、雄大な自然の多様な要素の繊細な推移が、描写されうる土台ができているのだろうと拝察する次第です。

    自然の刻々の変化に、永遠の光と響きを撮る。

    撮影と録音された方々の努力に、感謝します。

    石部 顯 拝

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