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愚老庵ノートSo Ishikawa

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「桜の文化」を海外に伝える

「桜の文化」を海外に伝える

ここ数年、懲りずに「動画の桜」を追いかけていますが、なかなか心が震えるような幽玄な「生命のリズム」が収録できません。

この時期、桜の名所はどこも人で溢れていて、SNS映えを狙って桜を撮ろうとする人たちに混じってNATUREを収録しようとするのは、花見の宴の中で座禅を組むような難しさがあります。

そんなメールを友人に送ったところ、以下のような返信が返ってきました。

>桜の撮影、応援に、禅語を贈らせていただきます。

 全存在
 岩、川、海、そして星々ー
 一切が悟っている。
 それはあなた次第だ。

 あなたが悟っていれば
 あなたは悟った世界に生きる
 もし、あなたのエネルギーが、内部で祝福していれば、
 全体が、祝福の交響曲となる
 あなたが世界なのだ!

 桜と戯れ、遊んできてください。
 桜がこころ開いてくれますように。

この言葉を読んで、警策に打たれたように感じました。

誰も撮ったことがない幽玄な桜を撮ろうとして、いつの間にか肩に力が入っていました。花見の喧騒を遮断して桜に集中しようとするあまり、心が緊張し「遊び」がなくなっていたのです。これでは宇宙と響働して神秘的なシーンを収録できるわけがありません。

桜に心を開いてもらうためには、自分の心が開いていなければなりません。童心に還って桜と戯れ、遊ぶところから、もう一度出直さなければと思いました。

このメッセージを贈ってくれたのは、いつも「愚老庵ノート」に熱いコメントを送ってくれている40年来のソウルメイト、アッくんこと石部顕さんです。

アッくんと私には、幼い頃のトラウマから心理学を学び、それに飽きたらずに宗教やスピリチュアルな世界を探究してきたという共通点があります。

アッくんは、自閉症児として子供時代を過ごし、その環境から東大に入学して心理学を学び、禅の修行も積んでいます。

「愚老庵ノート」というステージを作ったことで、これまで歩んできたお互いの人生のエッセンスを交換するセッションを始めることができました。

このセッションはジャズのセッションのようでもあり、連歌を読み合っているようでもあり、魂が共鳴したところに何かが降りてくる予想出来ない楽しさがあります。最近では、このセッションを楽しみにしてくださる人も増えてきました。

アッくんは、大学時代の禅クラブの先輩と一緒に、NGO AGRI (農業とみどり研究所)の運営にも携わっていて、そのネットワークで海外からも NATURE JAPANのサイトを訪れる方が増えています。

NATURE JAPANには、英語のサイトもあります。このサイトで英語の翻訳をしてくれている 無頼庵こと Brian Amstutzs さんとのセッションも心が弾む楽しい時間です。

Brian は、シアトルで生まれ、若い頃にはミュージシャンをしていましたが、日本の伝統文化に惹かれて来日し、大手の広告代理店勤務を経て、翻訳家として、日本の美術や建築などAIでは翻訳が難しい深い内容を、海外に紹介しています。

Brianとは、NATURE通信の英語タイトルの打ち合わせと称して、奥様の恵子さんも交えて、FaceTimeで月に一度「おしゃべり」セッションをしています。Brianとも40年近い付き合いですが、NATUREを介することで、心を開いてより深い交流ができるようになりました。

Brianの心の奥には、日本の伝統文化の知恵を海外に伝えたいという「願い」があるそうです。そして、何故か同じ「願い」が、アッくんにも私にもあります。

「類は友を呼ぶ」という心の法則が、このようなセッションの場を作り出してくれたことに、ひたすら感謝しています。

同じ「痛み」を共有し、同じ「願い」を持つ仲間と一緒に作り上げるセッションの楽しさ、これが今、NATUREを制作し伝えてゆく大きな原動力になっています。

皆様からも、メールなどで様々な感想やコメントをいただいて、それが励みになっているのですが、私一人の胸に留めるだけでは勿体無いと感じる内容が多々あります。

他の方々とも共有できるように、思い切ってこの愚老庵ノートのコメント欄で、一緒にセッションしていただけると嬉しいのですが・・・

桜吹雪
https://nature-japan.com/post_nature/tsushin-apr2022-4/

 

日本の伝統文化の底流に流れる「無常の美」を海外の人たちに伝えるのは、なかなか難しい仕事です。

変わらぬ「永遠の美」を求める西洋文化の美意識からすると、朽ちてゆくものに美を見い出す「侘び寂び」の世界は、理解しにくいのかもしれません。

そんな時、桜の動画は、理解を助けてくれる格好の題材になります。美しい盛りに散ってゆく桜の神秘的な美しさは、言葉など無くともダイレクトに見る人の心に伝わります。

しかし、このシーンだけでは「侘び寂び」の世界を伝えることはできません。先人達は、桜の蕾が開花するのを心待ちにし、雨や嵐で花びらが散るのを憂い、満開の桜の見事さに心を奪われ、散ってゆく桜に我が身の儚さを重ねていました。

「侘び寂び」という先人達の美意識は、移ろいゆく自然の景色を愛でる日々の暮らしの中で育まれてきたものなのです。

日本の自然は、季節によって劇的に変化し、神秘的な風景を造り出します。四季というサイクルの中で繰り返される無数の死と再生のドラマは、「無常」と「生命の輪廻」という、独自の死生観を生み出しました。

朽ちてゆくものや不完全なものを愛でる「侘び寂び」という深い美意識は、この日本特有の気候風土と、そこで育まれた死生観を抜きにしては語れません。

先人達は、自然を支配して「永遠の美」を求めようとはしませんでした。自然の一部として生き、移り変わる生命のサイクルの中に、変わることのない「無常の美」を見ていたのです。

今、世界の眼が日本のカルチャーに向いているように感じます。アニメや食文化、そして、その背景にある伝統文化や美しい自然風景に惹かれて、世界中からインバウンドの波が押し寄せています。

日本に惹かれてやって来る人たちに、日本の伝統文化の智慧の奥深さを、動画の「生命のリズム」とそれを巡るセッションで伝えてゆくこと、それが NATURE JAPAN のミッションではないかと感じています。

今年はもう桜の季節が終わります。来年は、心を開いて桜と戯れることができるような人里離れた撮影場所を探そうと思います。

あと何回、桜の季節に出会えるのだろう、いつの間にかそんなことを考える歳になってしまいました。願わくは、花咲か爺さんになって枯れ木に「生命の花」を咲かせたい、それがこれからの私の夢になりました。

 

NATURE通信 Apr.2023 「桜の季節を振り返る」
https://nature-japan.com/cat_nature/apr2023/

BRIAN AMSTUTZ COMMUNICATIONS
https://englishtranslation.weebly.com

2023/4/21

Tags:NATUREへの道

Comment

  • Dr Namrata:
    2023年4月21日

    It is a beautiful planet, one of the most beautiful,
    because one of the most alive. This planet has to be loved,
    this planet has to be rejoiced in.

    It is a gift.
    Congratulations Sensei.

  • Akira Ishibe:
    2023年4月22日

    ■「無常の美」と「寂静の美」━今ここに、永遠を観る日本人

    世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのぞけからまし (業平)

    ジョン・レノンがイマジンを作るインスピレーションを得た禅の思想。コロンビア大学で、鈴木大拙の話を聞いたオノ・ヨーコが感動してジョンに伝えた。禅画と俳句を、こよなく愛したジョン・レノン。

    白隠の「南無地獄大菩薩」(地獄も極楽も心が作る。本来みな仏)にインスピレーションを得た彼は、イマジン、想像してみようと歌う。東洋と西洋の魂が共振し、時と国を超え、心に響く名曲が生まれた。

    大拙は「侘び」を、誰の心の中にもある、時代や社会的地位を超えた最高の価値をもつ存在を感じることと言う。人だけでなく山川草木、すべての自然に、日本人は、永遠の生命、真理(仏)を感じ、敬った。

    無常とは、瞬間、瞬間すべて過去と同じものはなく常に新しい現実が生まれ続けている今。永遠の何か(涅槃寂静)の慈悲と智慧に運ばれ新たな成長に向かう、ポジティブな一面がある(芭蕉の「軽み」へ)。

    ゲーテは、死に対し、まったく恐れを感じないと言う。太陽を見よ、西の空に沈むかに見え、再び東から上る、私たちの魂もまた同様に不滅であり、永遠なのだから━。縄文の日本人の死生観に共鳴する。

    千利休の「一期一会」━。宇宙の中、今ここに、あなたと出会い、対坐する。それは計り知れない奇蹟、尊く、有り難きこと。無常の世にあり、永遠の友として、今この時を愛おしみ、味わい尽くそう。

    石川さんのご縁から、縁の輪が広がり、訪れる未来が楽しみです。無常だからこそ、新しく生まれ変わり成長できる、現実は変わる。自然は、個性豊かな生命の美を、瑞々しく輝かせ喜び歌っている。

    永遠の寂静の美に抱かれて、無常の美は、儚く美しいのでしょう。

          さまざまの事 おもひ出す 桜哉  (芭蕉)

    石部 顯

  • Akira Ishibe:
    2023年5月6日

    石川さんがエッセイに触れられている「自閉症」の可能性について、最新の心理学・医学研究による見解が、『ザ・パターン・シーカー』(ケンブリッジ大学心理学・精神医学教授著)に分かりやすく著されています。自閉症だけでなく、意識の可能性に関心のある方に、お薦めします。以下、アマゾンに投稿した推薦の言葉の一部です。ご参考まで━。

    ザ・パターン・シーカー:自閉症がいかに人類の発明を促したか

    ■自閉症で苦しんでいる方、親御さん、心に関わる職業の方にお薦めしたい

    子供の頃、自閉症と診断され、適応するのに苦労してきた者として、最新の科学的知見に基づく、「自閉症の可能性」を開く手がかりとして本書をお薦めしたい。

    自閉症の方が、本書を読めば、自分がいま置かれている、人間として持っている心的傾向の位置(脳の性向による5分類)、社会的な立場・位置、可能性(神経多様性の個性的役割、人類にとっての必要と意味)、そして問題点(超えるべき課題)が把握できるだろう。

    https://www.amazon.co.jp/gp/product/4759820892/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o08_s00?ie=UTF8&psc=1

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